躑躅花匂う:

伏せられた睫毛は花の雌蕊か何かかと思った。それだけ、この5月の極彩の中のアンナは綺麗だった。
「桜が散っても、ツツジが咲くのね。綺麗だわ」
そう言って彼女は首を動かし視線をツツジから葉に移した。二人の間の、一歩分の距離。

葉は、自分の一目惚れのことを思い出していた。白い雪山で、白い着物を着て真っ白な顔をして泣いていた女の子、空は狂った様に荒れていた。

ヒュウ、と風が吹いてアンナは髪を手櫛で直す。楠が古い葉を落とす。ツツジはしっかり花を枝につけていて、少しだけざわりと音をたてただけだった。
一目惚れはアンナと一緒にいる限りずっと続くのだろうと思うと、葉は何故だか泣きそうになって発作の様にアンナの真横から彼女に抱きついた。あの無彩の中で出会った時よりアンナは小さくなり、たまらなくなって耳に鼻を付けたら「大きくなったわね」とアンナが言ったから、とうとう涙が一粒溢れてしまった。
自分の一目惚れを約束で繋ぎ、約束は破れて随分遠くまで来てしまったけど、いつだって涙を流す程にアンナが愛しいのだった。
「ツツジの花って甘いって本当?」そう呟く彼女に蜜の吸い方を教えてあげるまであと一秒。地球になりたかった兄の気持ちが分かった気がしたけど、足元の土が鳴る音を聞いてやっぱり今のままが良いと思った。






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アンナが縛られたとか葉が約束を守れなかったとか、そういうの全部超えて恐山での一目惚れがあると思うんだ・・流れにずっと過程が付いてきてるわけだし