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宇宙ノスタルジー: 星が洪水の様に溢れているから、この土地のしめっぽさはきっとこの夜空の露のせいで、空気を目一杯吸い込んでは吐き出して見慣れない地平線に酔った。オイラの上着と(昔はアイツの)ヘッドホンは、この土地によく似合った。便所サンダルは赤茶けた砂にはミスマッチかとも思ったんだが、サンダルはオイラ自身に馴染んでしまっているから、オイラがここに馴染まんとどうしようもないのだった。 排気ガスの臭いが妙に合うと思ってしまうのはなんでだろうか。風に吹かれ、耳のすぐ後でバタバタなる上着のフードが凄く愛しく思えるのは、ある種の感傷なんだろうか。 鼻歌ではなしに、おぼろげながら歌詞までちゃんと歌ってみた。さっぱり意味もわからないのは今も昔も同じで、音楽を聴くという行為に別段意味を見い出しているわけでもないところも変わっていない。何度も聴いて、耳で覚えただけの英語の歌。全てを置いてきたあの部屋よりも今の自分の方がこの曲に近かった。 「葉くんの歌声は良いね、ずっしり腰を据えているんだけど、表面はフラフラしてるから、思わず信頼してしまいそうだよ。あれ、英語の歌だよね?」 「よくわかるなリゼルグ…テキトーすぎて俺何語がわかんなかったぜ」 「フン、歌に信頼性を求めるとは、貴様は余程後に何も持っていないのだな」 「そうだね、だからだろうね。わからなくったって良いんだよ、葉くんの流れになら、こんな僕でも乗っかってフラフラ出来てしまいそうだ」 昔出雲の家の押し入れから、ヘッドホンといっしょにギターを発見した。黒いハードケースにしまってあったそれは赤っぽい木でできたアコースティックギターで、弦は錆びてストラップの端はほつれていた。 ケースの中に横たわるそいつの弦を向こうから手前へと鳴らしてみると、六本の弦が不必要なまでに振動して寂しげな音をたてた。奇妙にぶれた和音は、誰かを呼ぶ遠吠えそのものだった。そのギターはこうやって押し入れから解放されることを願っていたのか、それとも、ただ持ち主にもう一度いじってもらいたかっただけなのか、オイラには判断がつかなかった。日に焼けた畳と西日のぼんやりとした記憶が今も残る。 結局オイラは、元あった場所にそいつを戻した。 あのギターは、まだあの部屋の押し入れの奥で眠っているのだろうか。出来ることならこの地に連れて来てやりたかった。 音楽は好きだ。耳から身体の隅々まで知らないだれかの感覚に浸れる無防備さは、人をどこまでも落とし漂わせる。かつてあのギターをかき鳴らしていたアイツも、今はどこにいるのやら、今も、音楽を思い出すのだろうか。 この土地を走る大型車のエンジンの揺れはベースに似ている。置いてきたもの全てに愛を感じ、満天の星空はもうすでにこぼれてしまって星たちには行き場がない。オイラはそいつら全部を掬いあげて夜空へ放り投げかえしてみた。 ――――――――ちょっと君の歌い方は粘っこいよ 囁かれて笑んでしまった、異国の平野の真ん中の夜。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 思えば、ハオ様は作曲するし、ミッキーはミュージシャン目指してたし、葉はヘッドフォン(←)だし、麻倉は皆音楽好きなんですね。 |